五十音コラム「き」キラキラネーム

ここ数年来、当て字を多用した奇抜な名前、所謂「キラキラネーム」への風当たりが極めて強くなっている。

その奇抜さ・読み方の難解さ、そしてその裏に見え隠れする親の自己顕示欲のようなものが、不良のイキり方だったり"中二病"の拗らせ方と重なるのか、一時期は「DQNネーム」と言われたことも。いずれにしてもそういう親しみ辛い部分が、何となく人の反感や嫌悪を買うことが多いのだろう。

最近に至っては、子供の人生に関わるから、そういう名前は「断じて付けるべきではない」という論調が増えて来たように思う。単に、一般的に馴染みが薄いから親しみ辛いとか、自分のセンスと合わないから受け入れ難いとか、パッと読めないから面倒くさいとかではなく、まるでそれがモラルに反する"重大な悪事"であるかのよう。
批判の要旨としては、『奇抜な名前が原因で、子供が虐められたり困難に遭ったりする可能性が高くなる。それを承知でキラキラネームを付けるのは、許し難い親のエゴである』といったものが主流。最近fbなどでは『医療機関では患者本人と氏名の一致が絶対条件だから、重篤な状態でも名前の読み方が違えば輸血も手術もできなくて生命の危機に繋がる』的なエピソードも、キラキラネームの弊害としてよく拡散されている。

これらの意見、本当に正しいだろうか。

私自身、そういう名前の具体例を見聞きすると、正直「この名付けのセンスの人とは親しくなれなさそうだな」という感想を抱くことはある。しかし、それはあくまでもセンスの合う合わないであって、決して善悪や正誤の問題ではない、と思う。

名前が理由で子供が虐められる?
それは100%、虐める側が悪い事象である。それを事前に回避するべき、所謂『虐められる方にも理由がある』とする意見なのだろうが、ハッキリ言えば、自分に馴染みがない名前だから虐める、という発想自体が諸悪の唯一の根源だ。親が想いを込めて付ける名前を否定する理由になるとは到底思えない。
ついでに言えば、子供が生まれた後に現れた悪質な犯罪者と同姓同名だから虐められるという可能性だってゼロじゃないのだから、そういう意味では誰とも被らない奇抜な名前の方がそれを回避できる可能性だってあるのだ。
キラキラネームを批判しているあなたの名前だって、恐らく江戸時代には奇抜で到底受け入れ難い名前だったはず。単に、馴染みが薄いもの・異質なもの、或いは時代の変化を受け入れたくないという"自分の趣味"を押し付け過ぎてはいないだろうか?

医療機関の件は、百歩譲ってそういう可能性が僅かにあるのかもしれないが…では、例えば難読苗字の男性との結婚を考えている女性に対して、「珍しい苗字になって、病院で読めなくて輸血ができなくて生命の危機に瀕するから」とか「生まれて来た子供が、珍しい苗字のせいで虐められるから」などという理由で、結婚や出産を止めたりするだろうか?それと同じ発想である。そう、真摯な想いの前には、そんな要素は取るに足らないものだし、そうであるべきだろう。

キラキラネームを"悪事"や"誤ち"のように全否定するよりも、そういう差別を生む発想や、その差別を当然のものとする環境の方を否定する、そんな社会になって欲しいものである。

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蛇足を承知で言えば…「こんな名前だと虐められる・苦労する」と具体例を挙げて嗤ったり蔑んだり否定したりする方々、あなた方のその発想こそが"虐め"そのものですよ。親の価値観が批判されるだけならばまだしも、仮にその名前を授かった子供自身が自分の名前をググって、バカにされたり全否定されたりしてるのを目にしたらどう思うでしょうか。
他人の想いや価値観を、評価したり否定したりできる「大人」だと自認しているならば、そのくらいの想像力は持って頂きたいです。